木下大サーカス

小学生の低学年の頃、木下大サーカスを観にいった。それまで、サーカスのショーはテレビでしか見たことがなかった。綱渡り、空中ブランコ、ピエロショー、球状の金属の檻のようなものの中でバイクが3台くらいぐるぐる回るショー。そんなのがあったと記憶している。

 

特に印象に残っているのが象のショーだ。どんなことをしていたかは覚えていないのだが、ショーが終わって引っ込む直前に、特大の便をし始めたのだ。それをスタッフが工事現場などで使われる一輪車で片付けていた。とにかく便の大きさに驚かされたのだ。

 

今でも木下大サーカスは続いており、猛獣ショーもやっているようだが、象のような大型動物をふだんどのような環境で飼育しているのだろうか。

 

欧米では、現在、野生動物を使ったサーカスのショーは法律で禁止されるようになってきている。サーカスで使えなくなった象・ライオン・トラなどは、大型野生動物の保護団体等によって保護されて、サーカスの時よりずっと広い場所で伸び伸びと暮らしていることが多い。

 

象の酷使・虐待

私が知っている歴史上の話では、紀元前3世紀にカルタゴの将軍ハンニバルが共和制ローマに遠征した時、37頭の像を引き連れて行った話だ。像が戦争に使われていたのだ。最初は勝利の連続だったハンニバルもねばり強いローマの戦い方に、最後は敗北してしまう。ハンニバルはローマ領域から脱出しているが、きっと、アフリカに戻れた象はいなかっただろう。

 

古代ローマでは、奴隷である剣闘士とライオンなどの猛獣が戦うショー人気があったようだが、これがサーカスの猛獣ショーの先駆けなのかもしれない。

 

サーカスに登場する動物たちは、象に限らず芸を仕込まれる。自らしたいわけではないから、人が飴と鞭で仕込むわけだ。ある意味奴隷である。芸をしていないときは、狭い折に入れられて飼われている。これが何年も続けば、病気になったっておかしくはない。特に象の場合は、寿命が長く何十年と生きるのでなおさらだ。

 

私が YouTube の映像で見た象は、長年サーカスのでの照明を浴び続けて失明してしまっていた。それでやっと引退することができ、像の保護施設に行くことができたのだ。

 

サーカスでは時には事故が起こる。人間同士でするショーだって事故が起こるのだから、動物を使ったショーなら嫌がる動物に無理やり芸をさせているのだから、事故が起きたって不思議はない。でも、それは動物たちの責任にとは言えない。が、かつてアメリカで、サーカスの象が人間を死なせた(当時の人たちは「殺した」と考えたようだ)ということで、絞首刑になったことがある。リンチを受けた黒人達がそうされたように、首に鎖をかけられてクレーンで吊るされ、絞首刑にされたのだ。今から見ると、狂気の沙汰としか思えない。

 

象は間もなくサーカスから消えるだろうが、アジアの国では象が貴重な労働力になっている地域がある。山間部で、重機の代りに重い木材を運搬したり、観光客を乗せてジャングルや山道を歩いたりと。何十年と休みなく働き続けている象たちがいる。

 

また、アフリカでは象牙目的だけの為に密猟者に殺されている象たちもいる。

 

象の保護

現在多くの大型野生動物が絶滅の危機に瀕しているが、それらの保護活動も活発化している。

 

アメリカには、主にサーカスで使われていた象を引き取り、野生に近い状態で自由に暮らせるようにした保護施設がある。

 

タイにも、労働力として酷使されてきた象を引き取り、余生を出来るだけ自然に近い状態で暮らせるようにしてある施設がある。そこでの様子を見ていると、象はかなり社会性のある動物で、血縁関係にない像同士でも群れの仲間に入れるし、いつも一緒にいたがる仲の良い象同士がいたり、大人の像が協力して小象の面倒を見たりする。また、人間との関係でも猫なんかよりずっと人懐っこいように見える。

 

地球は悲しいことに、命が他の命を奪わなければ生きていけない世界だ。そこはどうしようもない部分だが、自然の中では生物量ピラミッドで説明されるように本来バランスがとれるようになっている。その本来のバランスを崩しているのは、天変地異以外では人間の活動であろう。人類は自然の恩恵を独り占めしているからこそ、その犠牲になっている他の生命を自分達から積極的に保護していくことが必要なのだと思う。