岩盤規制

 昨日軽く触れた岩盤規制について綴らせていただきます。岩盤規制とは役所や関連業界団体などが既得権益を守るために改革にそろって強く反対して、規制緩和や撤廃が容易にできない規制を言い、医療・農業・教育・雇用などの分野に見られます。今日はその中の医療分野における薬剤師の問題に切り込みます。昨今薬学部新設の動きが再び活発化していますが、定員割れしている大学も増えていることはご存知ですか? 定員の3割を切る大学すら存在しています。こうなると無試験状態となりレベルは低下する一方で、偏差値30台の薬学部もあるほどです。その結果、6年で卒業できない留年生や薬剤師の国家試験に合格できない浪人生であふれています。私大では6年卒業率が何と60%程度で、今年2月の行われた国家試験の受験者数は新卒者8242人に対し、既卒者が6185人にもなっています。6年間学んでも薬剤師になれない現実に、薬学部志願者数は昨年より大きく落ち込み薬学部離れが顕著になっているほどです。この惨憺たる状況をひきおこした大きな原因の一つに薬学部の乱立があります。1990年代まで46校しかなかったのに、現在は74校。定員は約8000人から11500人に増加しているのです。文科省はこの現実に対し、レベルの低い薬学部を廃止し、総定員数を絞るべきなのに何ら手を打たず、定員割れについては各大学の自主的な改善を求めているだけです。一方地方の薬剤師不足は深刻であるという実態もありますが、調べてみると日本の薬剤師数は国際的にみて決して少なくはなく、人口1000人当たりの就業薬剤師数は主要12か国中トップなのです。ではどうして薬剤師不足となるのでしょうか。それは日本の薬剤師業務が薬事法で一日40枚の処方箋しか処理できないことになっているからです。欧米では調剤業務の多くを調剤助手が手掛けていますが、日本では調剤助手制度は認められていません。故に薬剤師不足となるのです。40枚という上限を撤廃し、調剤助手制度を導入すれば問題は解決の方向へと向かうはずですが、日本薬剤師会はそうなると仕事にあぶれる薬剤師が増えると懸念して反対しているのです。まあ驚くべき理論ですが、これは岩盤規制のほんの一面にすぎません。このような岩盤規制がある限り日本の状況は変わりそうもありませんね。非常に残念なことですが。