よっぽどの縁 金京勲氏

 私が初めて中国を訪れたのは2010年のこと。反日の姿勢に我慢できず、この国と韓国には行かないと決めていました。それが倫理法人会で県役員をしていた友人達に、見聞を広げる意味で付き合うよう強く誘われ、しぶしぶ出かけたのが始まりです。上海に行きましたが付き合いだけで、興味もなかったのでどこに行ったのかほとんど覚えていませんが、高層ビルの多さにビックリしました。それぞれの同業の会社を中心に数箇所訪問しました。中国の大手塾も訪問して意見交換してきましたが、ただそれだけです。帰国する際にもう二度と来ることはないと思い、現地を後にしたのを覚えています。帰国後翌日は東京にて新卒説明会でした。最後の自由質問の時に老けた学生が手を挙げました。そして「社長は海外進出を検討していないのですか。例えば中国など」。びっくりしました。会社説明会は全部で40回ほど行いましたが、このような質問は後にも先にもこの時だけです。絶対行かないと思っていた中国から帰国早々、このような質問を受けたことに何かの縁だと関心を持った私は、質問者のメールアドレスに一度会って話を聞きたいと送り、快諾を受け本社で話を聞きました。当時彼は35歳で中国では医師としてキャリアを積み、研究のために順天堂大学の博士コースに入り、次年度卒業見込みの人物でした。日本と中国の経済交流のために日本語が話せて、日本企業で働ける人材を育成する仕事を興したいと熱く語りました。ただ資本が足りなかったのです。このとき「よっぽどの縁」を感じた私は彼の事業への投資を決めたのです。あれから9年近くたち、紆余曲折があり当初の目論見とは異なりますが、彼は医者として細菌研究者としてその地位を固めつつあります。投資した結果はまだ出ていませんが…